はーど・ごあな日々

2017年の夏、体調を崩して倒れる。その後仕事を辞めてニートに。小説を書いたり、動画を作りながら日々の生活を綴る

ニート、名古屋で生き抜く ~ワンコインで住む編~

 前回の記事からまただいぶ時間がたってしまった。あれから色んなことがあり、紆余曲折を経た現在、僕は実家を出て名古屋に住んでいる。

 今まで実家にいるのがつらすぎて逃げるように日本国内のあちこちへ貧乏旅行を続けてきたけど、そうするのも疲れてしまった。体力的な問題もあるし、貧乏旅行と言えどだんだん出費がかさんできてしまったのが理由だ。貯金はまだあるけど、さすがにこんな生活を続ければあっと言う間になくなるだろうな、ヤバイなあ、とぼんやり焦りだしたのが四月の始めごろ。「実家を出たい。でもまたバリバリ働ける自信もないし、生活費はどうしよう」と悶々と悩みながら手当たり次第に安い賃貸を探していた。

そしてある日、僕は見つけてしまった。

 

 

《家賃:1日/500円 ネット環境完備》

 

 

 バーーーーーーン、という効果音が入りそうな。

 いちにち、ごひゃくえん? 

 そんな表記してる物件、生まれてはじめて見たぞ……。書き間違いじゃないか?

 

 場所は名古屋市。都会のど真ん中。調べてみると駅からさほど離れておらず、交通手段の確保も盤石。周りにはスーパーや飲食店が立ち並び、食料調達には困ることがない。ちょっとがんばれば自転車でも名古屋駅まで行くこともできそうだ。周辺環境は全くもって申し分ない。だけどなんだこのでたらめな安さは? 一日500円って表記がもう正気じゃない。狂ってる。軽くホラーだ。もし間違いとかじゃなくて本当に値段通りだったら、事故物件かなにかだろうか? ヤ○ザの事務所が隣にあったりとか? 

 

 あまりの怪しさと怖さに、正直見なかったことにしようかと悩んだ。でも月計算で言えば一万五千円の物件でしかもどういう仕組みなのかはわからないがネット料金も無料という内容に、魅力が全く感じないわけもない。もし問題なく住めるのであれば、現状抱えている経済問題はほぼ解決するに等しいのだから。


 結局、僕はその一日ワンコインの妖怪物件へ下見に行くことを決断した。少しでも雲行きが怪しくなりそうならすぐに逃げよう。とっさに走れるように靴紐を強く締めていった。
 しかし、その心配は杞憂に終わる。結構お歳をめされたちょっと耳が遠いオーナーさんに案内され、見せてもらった物件は最寄りの大通りからちょっと離れた場所に立つ古びたビル。ヤ○ザの事務所が隣にあるわけもない、いたって平和な物件だった。そして室内を見ると、驚いたことに学校の教室ほどの広さがある。

 オーナーの話を聞くと、このゴミのような安さにはやはり理由があった。まず建物じたいが古びていること。室内は広いが、その代わり冬場はめっちゃ寒くて夏場はめっちゃ暑いこと。キッチンがないこと。そして浴室が離れにあること。そしてビルの下階はお店になっており、来る客の喧騒が響きやすいことだ。その代わりお店の方で設置してるWi-Fiの電波が上階の方まで飛んでいるのでそれを自由に使っても構わないと言う。なるほど、ネット代無料というからくりも解けた。そして冷蔵庫、電子レンジ、ベット、机、椅子、デスクライト、ソファ等の家具・家電を余らしているので必要ならば無料で貸すとも言われた。


 確かに生活する分、多少難がある建物であると言える。だけど都心に近くてこの安さ、そしてネット付き、家具・家電付きはやはり美味しい。あと純粋にこのヘンテコな物件に面白味を感じた。最後にオーナーさんから住み心地が悪ければ、三か月で出て行ってもいいと言われたのが決め手だった。

 よし、借りよう。

 

僕は腹をくくり、名古屋に移り住むことに決めた。

 

 

 

つづく、かもしれない