はーど・ごあな日々

2017年の夏、体調を崩して倒れる。その後仕事を辞めてニートに。小説を書いたり、動画を作りながら日々の生活を綴る

ニートがコワーキングスペースを開店して沖縄に飛んだ話

 記事のタイトルからして意味不明ですが、タイトル通りの事実なので仕方がありません。
 これから書くことは一日500円で住める妖怪ハウスに住むことになったという前回の記事の続きです。

 

あれからいろいろあり僕は沖縄に飛びました。

 

なんで沖縄???

 

 当時の心境を言葉で説明するのは難しいのですが、突然沖縄に行きたくなってしまったのです。
 恐らくあの時の僕は精神がバグっていたのでしょう。

 なんでそんなことになってしまったかの経緯はこうです。

 

 500円ハウスに住みはじめた僕は、あの後ありあまる空きスペースを利用して何か面白いことができないかと考えました。


 なにせ借りた部屋は、人が20、30人余裕で入るほど無駄に広い空間なのです。
こんなに広いスペース、一人で使うのはあまりにもったいないと思ったんですね。
あとめっちゃ広い部屋の中でぽつりと自分一人で住む生活に寂しさを感じてしまったというのもあります。
 僕の普段単独行動を好む癖に、反面極度の寂しがり屋であるというめんどくさい性格がここで発動してしまいました。

 

 そこで僕は何を血迷ったのかその空き部屋を使ってコワーキングスペースなるものを作りました。
(※コワーキングスペースというのは、空部屋を事務所、会議室、打ち合わせスペースなど多目的な用途で他者に貸し出して商売するアレです。)

 

その名も「FREE SPACE 虚無。」

 

 そのネーミングセンスからして当時の僕の病み具合が窺い知れます。言葉通り虚無だったんですよ、当時の僕は……。今も虚無ですが。


そんな「FREE SPACE 虚無。」は
〝誰でも無料で利用することができるコワーキングスペース〟と銘打ってワンコイン妖怪ハウスの薄暗い一室にて爆誕しました。

 

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「FREE SPACE 虚無。」の店内。お金をまったくかけていない潔いシンプルな内装で多くのお客さんから非難を浴びた。汚い


 なんでお金をとらなかったのかというと、理由はただ一つめんどくさかったからです。管理も大変ですし、そもそもお金をとるというシステムにすると色々、法律的にアウトになる問題があったので。


 だからお金を払わない代わりに、自分の家にある「もう使わなくていらないもの」
を寄付するというシステムを導入しました。
 こうして寄付してもらった色んな廃品たちを修繕してコワーキングスペース内の改装に使ったり、売ったり、他の人に貸したりしてほそぼそと生活する日々が始まったのです。

 

 店名が「FREE SPACE 虚無。」だっただけに自然と遊びにくるお客さんも、
何かしら濃い「無」を抱えたヤツらばかり。まともな人間などまず来ません。
 おそらく日本で最もダウナーなコワーキングスペースとして「FREE SPACE 虚無。」は名古屋の片隅にひっそりと存在していました。


 コワーキングスペースというのも名ばかりで実際にここをオフィス代わりに利用しようとする意識が高いお客さんは当然皆無です。利用者のほとんどは寄付者によって提供された膨大なレトロゲームでひたすら遊びまくるというゲーム部屋のような用途でしか使いません。
 じきに「FREE SPACE 虚無。」はどんな学校にも一つくらいある不真面目な連中の溜まり場になった部室のような様相を見せるようになりました。

 

 妖怪が出てきそうなボロボロのビルの一室に、週末になると夜な夜な得体のしれない若者たちが集まってきます。
 僕も彼らに交じってネットフリックスでフルメタルパニック魔法少女まどかマギカを見たり、お客さんから寄付してもらったスーファミマリオカートで遊んだりして無を過ごす毎日。
 楽しくはありましたが今思い返すとかなり不気味で不健康な日々だったと思います。


 しかし、そんな惰性で続いた生あたたかい楽園のような日々は早くも終わりを告げます。
 退廃的かつ不健康な生活が祟ったのか僕の精神は深い〝鬱〟へと没入してしまいました。

 

 僕はパニック障害社会不安障害双極性障害という負のトリプルエンジンを搭載している為、なにかとすぐメンタルがぶっ壊れます。豆腐の角をぶつけるだけですぐ壊れるほどのクソザコメンタルです。


 今回も例にもれずエンジンが派手に爆発してしまい、「FREE SPACE 虚無。」を運営する気力を瞬く間に失いました。

 

 そして「FREE SPACE 虚無。」を閉店させ、人が来なくなった部屋の中で一人、「イアー…」とか「ヌエー…」とか人間性の欠片もないうめき声をあげながらふさぎ込んでいた僕は……

 なぜか突然「海」が見たくなってしまったのです。

 

本当に何の予兆もなく突然のことでした。
しかもただ「海」が見たくなったのではありません。
僕が見たくなったのは史上最高に美しい「海」。

 

「海が見てェ……今まで見たことがないような最強の〝海〟が見てェ……!!!」

 

そんな欲望が頭いっぱいに広がり瞬く間に僕を支配します。

 

 おそらく毎日のようにワンコイン妖怪ハウスの薄汚い壁を見つめ続ける生活を送ってきたせいでしょう。
 汚いものを見続けてきた反動により、僕の脳内は綺麗で美しいモノが見たくて見たくて仕方なくなってしまったんでしょうね。
 そしてその時期が夏だったこともあり、僕は「美しい海」をまるで薬物中毒者のように渇望し始めたのです。


 はっきりいって当時の僕は完全にイカレていたのだと思います。
 その「美しい海を見たい」という狂ったような意志が犯罪的な方向に向かなくて本当に良かったなと今では思いますが。

 そんな時に、ちょうどTwitterのTLで沖縄の那覇で運営しているとあるシェアハウスの部屋が空いているという情報を見つけます。

 

沖縄です。沖縄と言えばシーサー。沖縄と言えばちんすこう。沖縄と言えば……海です。何より海があります。そうだ、沖縄に行って最強の海を見に行こう。

 

 これ幸いと僕はシンキングタイムゼロ秒でその部屋を借りる手続きをし、沖縄へ旅立つ身支度を始めました。
 Amazonでキャリーバックをポチって買い、適当に服を詰め込んであっと言う間に準備完了。
(この際に間違ってクソでかいサイズのキャリーバックを買ってしまい沖縄では超絶不便な思いをすることになる)。

 

 この旅は美しい海を見ること以外ノープランである故に、沖縄への滞在日数も未定。
名古屋へいつ帰ってこれるかもわからないので無人の「FREE SPACE 虚無。」の家賃を払い続けるのはもったいないと思い契約も解消しました。
妖怪ビルのオーナーさんも得体の知れない住人が去ってさぞや安心したことでしょう。

 

 こうして全てのしがらみから解き放たれた僕は双極性障害特有の躁状態(スーパーハイ)になりながら、航空チケットを握りしめ那覇へと飛び立ったのでした。

 

つづく